:: aquadrops ::

心の目で見るということ

 

やっと分かった気がする。
ベタな表現であまり好きではなかった言葉だ。

テレビである作家が言っていた。
「物事を感情で見る」。

最近すっかりいい写真が撮れなくなってしまった。
何を見ても何とも思わない。何も気づきがない。
いろんなものに見慣れたのか、感性が鈍ったのか。
20代の頃は、物事を感情で見ていたと思う。創作の原点だ。

どうしたらアートをやり続けることができるだろう、と
それが今、切実な悩みだ。
それくらいしか悩みがないほどに平和なのかもしれないが、
アートがなくても日々過ごせてしまう気がすること、
それが自分にとって危機なのだ。

明日死ぬとしたら何をやるか
って考えた時に、
人の心に残ることをする思う。
それは結局長生きしても変わらない答えだと思っている。

数年前だと思う、
9.11事件のニューヨークのWTCの跡地に建設されるビルディングの候補CG展を見た。
とても痛ましかった。
今の流行なのか知らないが、
斜めのラインを強調したピサの斜塔のような建築物が非常に多かった。
倒れたビルの跡に不安定なデザインはどうかと思う。
頭の中で、あの事件がフラッシュバックを起こした。
先日、本屋でそのデザイン採用結果を見つけた。
広場を囲んで4つの塔が建っている。
どのビルも地にしっかり足をつけ、空を突き刺した、
シンプルすぎるくらいごく普通の真っ直ぐなデザインだった。
市民の喜ぶ顔が見えた気がした。

こういう観点が、心の目で見るってことじゃないだろうか、
と思ったら、まだまだアートをやれる気がした。
今の自分に相応のアートのかたちを探そうと思った。